バンドゥン・ナイト

yehoc2008-03-01

西ジャワ高原地帯の大都市・バンドゥン。深夜、既に気温は20℃を下回っている。市街地に真っ直ぐと抜けるウジュン・ブルン通り、幌無しの白い貨物車に乗った私とエガはダンスホールに向かう。近くで寄ったガソリンスタンドで、ホールのヴォーカリストに渡す「おひねり用rp1000」の両替を忘れずに。
そこが何処だかわからない、大通りに面した一角、「ネオンサインの輝くダンスホール」なんて今時日本の何処でも見ない。が、此処では今も燦然と輝いている素晴らしき場末の盛り場。
オーナーか何かであろう、白い背広に赤い開襟シャツ、胸元にサングラス、パンチ・パーマ(ではないがそれに準ずるクリクリ頭)のオッさんが、顔見知りであったエガを見つけると店の中へ私達を案内してくれた。
盛り場=酒、煙草、ホステス。
毎朝、毎夕山中の拡声器から我先にとアザーンが流れるこのイスラムの町では、深夜に酒を飲んで騒ぐ事は表立って許されていない。その後ろめたさが、ホールの何とも言えない緊張感を生み出している。
圧倒的な退廃感。出口を見いだせないエネルギーが吹き溜る。
そこに響く「ジャイポンガン」※。
西ジャワのガムラン、ダンスミュージック。
バジュドラン・スタイルと呼ばれる、ジャイポンガンの中でも最もハイテンションな演奏。
踊り狂う、踊り狂う、踊り狂う。
炸裂するのだ。その音とその動きがぶつかる時に、光って散るのだ。多くの花を、実を、人を生み出し続けるこの土地には、それに応えるだけのエネルギーを持った音が必要であり、踊りが必要であった。
私は、ロックを聴き、ハウスで踊り、ドラムン・ベース、テクノ、エレクトロニカの果てに、漸くこのナチュラルで不純な、粗野で都会的なダンスミュージックに出会う。
※ジャイポンガンとは西ジャワ/スンダ地方の言葉で「踊る」という意味。